がんの遺伝子検査について


かつて乳がんなどの手術では再発などを考慮してがんの塊の周辺のリンパ節を脂肪と一塊にして切除していました。しかしリンパ節を広範囲に郭清することによって「リンパ浮腫」「感覚の異常」などの後遺症に術後、悩まされるケースも少なくありませんでした。そこでセンチナル(見張り)リンパ節の術中検査が普及しつつあります。摘出したセンチナルリンパ節は病理検査にまわされ、がん細胞がなければ術後のQOLも考えて拡大リンパ節の郭清はしません。従来はリンパ節を瞬間的に冷凍させ、2mm間隔でスライスしてさらに色素を加え顕微鏡で観察していました。がん細胞がある程度の大きさなら見逃すことはないのですが、短時間に標本をつくる工程など検査は経験や技量に左右される面もありました。細胞診クラス分類はクラス1からクラス5までありクラス3bは「悪性をかなり疑う」となっています。短時間で正確な判断がでない場合もあり、術後の病理検査でも同じことが言えます。またがんの悪性度や種類も様々あり、がんの確定診断の難しさがあります。そこで数年前からOSNA法と呼ばれる新しい手法が導入されてきました。最大の特徴はスライスした部分を顕微鏡でみるのではなく全体を特殊な薬品に溶かして分子レベルでがんの転移の有無を調べることです。リンパ節に本来、存在しない上皮細胞などの遺伝子を専用の装置で増加させ測定して、一定以上なら転移があると診断する方法です。これなら微小ながん細胞も見逃すことはないと言うわけです。癌研有明病院など数カ所の施設で行われた研究で精度が確認されました。すべての手術にこのような遺伝子検査がおこなえば術後の再発率は減少すると思われます。しかしこの方法でも100%とは言えない部分もまだあり、今後、検査精度の向上や情報量の増加をその後の治療にどう結びつけていくべきか、より広い視点での議論が必要です。

術中迅速病理検査はリンパ節をはじめ切除した断端の組織や細胞を検査し、切除範囲やリンパ節郭清範囲を決めます。がん細胞が見つかればその臓器の所属リンパ節の郭清や周りの組織を安全なマージンまで切除あるいは摘出します。またがん細胞がなければ縮小手術、標準手術になります。しかし所属リンパ節に転移していなくても術後に他臓器に転移をおこす場合もあり、根治手術は成功したのに再発をおこす場合もあります。すでに術前に細胞レベルで遠隔転移をおこしていた可能性があるからです。